研究概要 |
研究目的:遺伝子操作を用いて、プロテインボディ中へ親水性でかつ高栄養価のポリペプチドを導入することにより疎水性構造を破壊することによりコメのタンパク質の消化性と栄養価を格段に改善しようとするものである。 研究方法:研究目的を達成するため、(1)イネ登熟期胚乳中での貯蔵タンパク質の生合成、細胞内輸送、集積の各過程での機構解明、(2)外来遺伝子を胚乳細胞中で高度に発現させるためのプロモ-タ-の確保、(3)目的外来遺伝子のイネ細胞への導入とトランスジェニックイネの作出、の3過程に関する研究を遂行した。 研究結果:コメ貯蔵タンパク質は2種類のプロテインボディ(PBーI,PBーII)に集積することが明らかとなった。PBーIに集積するプロラミンは、前駆体ポリペプチドのNH_2ー末端にPBーIへタ-ゲットするために必要なシグナル配列を持つことが、cDNAの構造解析を通じて明らかとなった。イネ核遺伝子ライブラリ-より10kDaおよび13KDaプロラミン核遺伝子の構造解析を進めた結果、いずれも構造遺伝子の5'上流数100塩基内にイネ胚乳細胞中で特異的に遺伝子発現するために必要と考えられる配列の存在を確認した。イネ10kDaプロラミンの核遺伝子配列のうち構造遺伝子のシグナル配列に対応する部分を含む5'上流側1400bp分を調製した。その下流に牛αS_1カゼインのcDNAに相当するDNA配列を結合させた後、Bluescript SK^+に組み込んだ人工遺伝子(pPlPC)を構築した。イネ(日本晴)のプロトプラストヘエレクトロポ-レ-ション法で導入し、培養カルス中のDNA中に牛αS_1カゼインに対応する配列が存在することを、ポリメラ-ゼ連鎖反応法で確認した。ひき続き、形質転換イネ種子中でのαS_1カゼインの形成、集積に関する研究を進める予定である。
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