研究概要 |
カルモデュリン依存性プロテインキナ-ゼII(キナ-ゼII)のαおよびβサブユニットのcDNAを培養細胞に導入し発現させ細胞内分布を調べ以下の結果を得た。(1)αとβサブユニットは,それぞれ単独でも酵素活性を示すこと,(2)両サブユニットの酵素学的性質は類似しているが,カルモデュリンに対する親和性と自己リン酸化したCa^<2+>非依存性酵素の安定性に差がみられた,(3)細胞内分布に違いがみられ,αサブユニットは細胞質と顆粒画分の両方に存在するが,βサブユニットは細胞質にほとんど存在せず,顆粒画分のみに存在する,(4)酵素が膜に結合することにより基質特異性が変化し,酵素活性の調節と細胞内での存在様式が密接に関係すると考えられる,(5)αとβサブユニットの構成比が細胞内分布と酵素活性の調節に重要であると考えられる。 キナ-ゼIIの構造と機能の関係を明らかにするため酵素蛋白質を大量に得ることができるE.coliの発現系を用いて解析し以下の結果を得た。(1)E.coliの発現系によりαとβ両サブユニットは単独でも活性を示した。また簡単な操作で均一に精製された。(2)E.coliの酵素はラット脳のキナ-ゼIIと同様の酵素学的性質を示した。(3)キナ-ゼIIは触媒部位のみで十分な酵素活性を示した。(4)この活性はCa^<2+>とカルモデュリンに全く依存せず常に活性型であった,(5)カルモデュリン結合部位の欠失した変異酵素もCa^<2+>カルモデュリンに依存しないで酵素活性を示した。従ってカルモデュリン結合部位が明らかにされた,(6)自己リン酸化部位のThr286を他のアミノ酸に変異したものではCa^<2+>非依存性活性が出現しなかった。これらの結果からキナ-ゼIIの活性発現に関与する蛋白部分の構造が明らかとなった。 キナ-ゼIIのcDNAを培養神経細胞に導入することに成功し,神経突起の伸展が促進される結果が得られており,キナ-ゼIIの作用との関係を解析している。
|