マウス精子上の卵子認識レセプタ-と結合するモノクロ-ン抗体OBF13を用いてマウス精巣のcDNAライブラリ-の中から反応するクロ-ンを見いだすべく検討を行った。λgt11の系に組み込まれたcDNAライブラリ-は筑波大学の馬場忠博士より提供されたものを用い総数60万クロ-ンをスクリ-ニングを供した。しかし、OBF13に対して反応するクロ-ンを見いだすことはできなかった。OBF13抗原は蛋白分解酵素処理によって失活するので抗原に蛋白質が含まれると考えられるが、今回の結果はOBF13の認識エピト-プが蛋白質以外の部分を認識するかあるいは精子表面上でだけ形成されるような立体構造を認識していることを示している。今後はOBF13抗原に対するポリクロ-ナルな抗体を作成し、もう一度ライブラリ-のスクリ-ニングを試みる予定である。また、抗原のアミノ酸の一次構造を決定する事も試み、成功すればDNAプロ-ブを用いたスクリ-ニングを行いたい。 先体反応を終えたヒト精子とのみ反応するモノクロ-ン抗体MH61を用いてやはりλgt11に組み込まれたヒト精巣cDNAライブラリ-(クロ-ンテック社)から総数60万クロ-ンをスクリ-ニングしたがOBF13と同様MH61に対して反応するクロ-ンを見いだす事はできなかった。MH61が精子の受精能と結び付いていることを確実に示すために以下のような検討を加えた。MH61抗体をポリスチレンビ-ズの上に結合させてヒト精子と培養した。ビ-ズに結合した精子をマニピュレ-タ-で透明帯を除去したハムスタ-の卵子表面にもって行き卵子への結合能をビ-ズに結合していなかった精子との間で比較を行ったところ前者のような精子は卵子とよく結合したが後者はほとんど結合できずMH61抗体による受精可能精子の選別の可能性が示唆された。
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