マウス胚性腫瘍幹細胞株F9の分化系を用いて未分化細胞特異的な発現を示す遺伝子群を単離し、発現調節機構や遺伝子産物の機能解析を目指して、以下の研究を行った。 1.未分化特異的な遺伝子群をより確実に、しかも直接的にスクリ-ニングする為に、neo遺伝子をマ-カ-としたgene trapping vectorを用いた。このvectorをF9細胞に導入後、挿入部位に依存してG418耐性能を獲得したクロ-ンを選択し、これらの内、レチノイン酸による分化誘導後にG418感受性となる細胞株4種を単離した。これらの細胞株では、分化誘導初期にneo RNAの顕著な減少が認められた。 2.上記4種の細胞株由来の染色体のDNAを用いてサザンブロット解析行った結果、2種の細胞株では単一コピ-、他の株では複数コピ-の導入vectorがタンデムに挿入されていた。 3.挿入部位周辺の制限酸素地図を作製後、適当な制限酸素で染色体DNAを切断し、環状化した後、electroporation法による大腸菌への形質転換を行って、細胞に導入したvector DNA及び挿入部位周辺の染色体DNAを単離した。 4.4種の細胞株の内の一つ、G3から単離した染色体DNA断片をプロ-ブにノ-ザンブロット解析を行った結果、未分化F9細胞では対応する転写産物が検出されたが、そのレベルはレチノイン酸処理後の細胞では著しく減少していた。また、サザンブロット解析の結果、このDNA断片はマウス染色体上に存在する中等度反復配列であることが判明した。 他のクロ-ンについても同様の解析を行っている。
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