研究概要 |
個体発生は遺伝子の発現と、それを制御する誘導機構からなっていることから、多くの研究者の関心を集めるところとなっている。哺乳類の発生は胚発生と共に胎児の栄養をまかなう胎盤形成が不可欠である。この胎盤形成はややもすると個体発生の影に押しやられるきらいなきにしもあらずであるが、母体細胞と胎児細胞の細胞接触並びに情報交換を通して短期間に大型の器官を共同に構築する、極めて興味深い現象を提供している。今回、マウスにおける胎盤形成の過程を酵素細胞化学的に解析して、急激に変動する酵素活性の実体を明らかにすべくサイクリックヌクレオタイド代謝酵素adenylate cyclase,guanylate cyclase並びに関連酵素5'ーnucleotidase,MgーATPase,NaーKーATPase,CaーATPase,thiamine pyrophosphatase,glucoseー6ーphosphatase,cytochrome C oxidase,acid phosphatase,alkaline phosphataseの各酵素を日齢を追って検出、解析を行った。 着床開始後(妊婦5日)子宮内膜細胞にadenylate cyclase,guanylate cyclaseを始めとする多くの酵素活性の上昇を観察したが、活性部位は各々特徴的活性動態を示した。adenylate cyclaseとguanylate cyclaseは共に血管帯に陽性、被包脱落膜には陰性であったが、発生の進行に伴ってguanyulate cyclaseは被包脱落膜にも陽性となる。5'ーNucleotidase活性は被包脱落膜、血管帯に陰性で、基底脱落膜血管に陽性、alkaline phosphatase活性は血管帯と被包脱落膜に強陽性で、MgーATPaseは血管帯血管に陽性、NaーKーATPaseは血管帯に陽性、被包脱落膜に陰性であった。これに反してCaーATPaseは被包脱落膜、血管に共に強い活性を認めた。現在各発生段階において光学顕微鏡のみならず電子顕微鏡による検索を行っている所である。
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