研究概要 |
本研究は本研究者がニジマス卵膜に新しいタイプの糖鎖構造をもつ糖タンパク質(KDNーgp)を見出し、この糖タンパク質が同種精子と特異的な相互作用をもつという予備的知見に端を発する。KDNーgpと精子との相互作用を分子レベルで解析し、認識能構として意義づけを行う。 (1)ニジマス卵膜から単離したDKNーgpーVEの糖鎖構造の決定。KDNは1986年に我々のグル-プが発見した新しいシアル酸アナログである。まず,KDNーgpーVEにおいては、KDN同士が縮重合した(KDN)n(n=1〜6)が存在するることを明らかにした。次にKDNNーgpの糖鎖は大部分が0ーグリコシド型で、単一構造のコア糖鎖に重合度の異なるオリゴKDN鎖が結合した、KDNα2ーGalβ1ー3GalNAcα1ー3〔ー(8KDNα2)nー6〕GalNAcα1ーThr/Serであることを明らかにした。 (2)KDNーgpーVEでウサギを免疫して得た抗血清を用い、蛍光および酸素抗体法により、ニジマス卵膜においてKDNーgpは卵表面全域にわたって存在し、局在部位は第二層(外側から二番目)であることを明らかにした。 (3)KDNーgpーVEと分子量(700〜4000K)および糖とアミノ酸の組成がほぼ同一の分子がニジマス卵巣液(体腔液)にも存在することを見出した(KDNーgpーOF)。糖鎖構造は、卵膜からのものと同一であり、抗KDNーgpーVE抗血清と反応した。KDNーgpーVEとKDNーgpーOFの生合成および機能上の関連を解明する研究にも着手した。 (4)ニジマス以外のサケ科魚種(ヤマメ、イワナ、ヒメマス、シロサケ)についてKDNーgpの存在を検索したところ、ヤマメにはKDNーgpが殆ど存在せず,KDNがNengcで置換えられた夫同分子Siaーgpが存在した。 (5)ヤマメ精子はSiaーgpと、ニジマス精子はKDNーgpと特異的に結合することを示す実験結果が得られ,これらの糖タンパク質が卵表面で精子を認識する機能をもつという推定が支持された。
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