研究概要 |
1)日本列島・東アジア・アメリカ大陸にかけての地域について,主として最終氷期以降の古地理・古気候・古生態に関する文献情報資料集を4冊作成した。 2)北海道大雪山の氷久凍土について調査し,電気探査により山岳永久凍土の下限を約10mと推定した。またパルサのボ-リング調査を行ない,深度6m以上の試料を採取して,花粉分析とC14年代測定を行なった。 3)最終氷期における北海道の古環境を復元した。最終氷期の海面変化を考慮すると,宗谷陸橋は約7万年前から約1万年前までほヾ連続的に存在し、アジア大陸からマンモス動物群の南下の回廊となっていた。夕張川流域の最終氷期前年の厚い礫層からマンモス象の臼歯とオオツノシカのツノが出土し,約6万年前にはマンモスが北海道に来ていたことがわかった。 4)東北日本の最終氷期最盛期の植物化石により,当時の植生は基本的には暖温帯・冷温帯・亜寒帯に成帯的に区分されたが,各帯の種構成・群落は現在の植生帯と著しく異なるものであることがわかった。 5)中国・朝鮮・シベリア・日本列島の中期更新世以降の哺乳類相を復元して,日本列島への動物群の移動について考察した。その結果,日本列島の動物相は中期更新世にすでにかなり固有度の高い動物群で,大陸からの移動は従来考えられていたほどではない。後期更新世には大陸からの動物群の大規模な移入はなく,その後年にマンモス動物群の限られた移入があった。完新世になり、日本列島の動物群は大陸から完全に孤立し,動物分布の境界線は現在のような状態になった。
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