研究概要 |
本研究は、新超伝導エレクトロニクスの基礎となる酸化物高温超伝導膜の作成とその物性評価を目標としている。本年度は、とくにYBa_2Cu_3O_7(YBCO)およびBi_2Sr_2CaCu_2O_8(BSCCO)膜の表面観察と磁化特性に重点をおいて研究した。 スパッタ-成膜において、基板の選択(SrTiO_3とMgO),温度と雰囲気の通正化により、C軸配向性のよいYBCO膜とBSCCO膜が得られるようになった。この膜の構造は通常、X線で観測するが、原子スケ-ルで超伝導状態の表面を観察するため、STM技術を低温に拡張し、液体ヘリウム濃度で、少なくともBSCCOの長固期格子変調構造を把えることに成功した。(裏面リストの第2,第4論文) 一方、高温超伝導膜のC軸に平行に磁場を印加して、磁化曲線を測定したところ、そのヒステリシス特性が、適当なスケ-リングにより、物項(YBCOかBSCCO)や温度に依存しないユニバ-サル挙動を示すことを見つけた。さらに、このユニバ-サリティは、磁東クリ-プの立場から一般的に説明可能なことを簡単な仮定のもとで示した。(第3,第6論文)。このユニバ-サリティは、複雑で解釈が混乱している高温超伝導体の混合状態における磁東の挙動を整理する上で、重要な物と考える。 YBCOの銅元素の一部を鉄でおきかえた系におけるメスバウア効果の解釈をめぐって、多数の説が公表されている。われわれは、試料の熱処理時の雰囲気により生じるスペクトルの差を利用して、新しい解析方法を提案し、メスパウア分光のデ-タ解析に一つの方向を示すことができた(第1論文)。ミクロな観点から高温超伝導体を評価するアプロ-チの一つとなろう。その他、超伝導デバイスのフィ-ジビリティに関する考察も進めている。(第5論文)
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