反応における振動混合の考えは「分子軌道混合」と表裏をなす考え方で、同じ現象をエネルギ-の二次微分である力の定数の立場から記述しようとするものである。今回は点電荷電場下のホルムアルデヒドの振動を考えた。一般に点電荷電場下では並進、回転の縮退が一部解けて疑似振動となるが、安定配置ではそれらの影響は考従しなくてよく、ホルムアルデヒドのC_2v対称性は摂動系においても保たれているので、基準振動の混合を考える際同じ既約表現に属するもの同士の混合を考えるだけでよい。計算はPM3法で行ない、摂動系と原系のヘシアン行列との差F'_<exaci>を使って摂動論的に振動混合係数および振動数シフトを計算したところ、摂動系の基準振動を原系の基準振動でマッピングした結果と一致した。つまり、摂動的扱いは妥当であることがわかった。 次に、原系の振動情報から摂動系の振動を予測するために、摂動エネルギ-を、各原子をNet Chargeを持つ電荷球と考えたときの2中心ク-ロン相互作用エネルギ-の変化と近似し、解析的2次微分を行って近似摂動ヘシアンF'_<appr>を導出して振動混合係数、振動数シフトを計算してみた。その結果は必ずしもマッピングの結果と一致せず、摂動ヘシアンF'自体を比較してみると水素原子に関するF'_<appr>に問題があることがわかった。改善ステップとして、F'_<appr>がMullikenのNet Chargeに基づいているのでESP法に基づくNet ChargeをPM3法で計算し、その値を使って摂動ヘシアンを導いた結果、Mulliken近似の場合と較べてほとんど変化はなかった。 今後は原子分極の効果を近似式に取り入れ、その結果をfloating基底を用いてab initio法により計算した結果と比較するなど、一層の検討を行いたい。
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