研究課題/領域番号 |
02230208
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅原 正 東京大学, 教養学部, 助教授 (50124219)
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研究分担者 |
泉岡 明 東京大学, 教養大部, 助手 (90193367)
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キーワード | ツインドナ- / 定電流電解法 / イオンラジカル塩 / ファン構造 / コンホメ-ション / 積層様式 / 有機半導体 / 合成金属 |
研究概要 |
本研究では有機分子性結晶において、伝導電子分を介して局在スピンを強磁性的に整列する系を実現するため、2つのドナ-部位を架橋したツインドナ-を設計・合成しその物性を研究することを計画している。 本年度はTTF骨格をメチレンジチオ鎖で連結したツインドナ-1及び2本のエチレンジチオ鎖をもつドナ-2を合成した。これらのラジカル塩は ^nBu_4N・ClO_4を支持電解質とし、白金電極を用いた定電流電解法により作成した。得られた塩の電気伝導度は、直流四端子法により測定した。ドナ-1については、同一の電解セル中に外形の異なる2種のClO_4塩が生成した。これらのうち、結晶A(組成1:1)は、絶緑体に近い半導体であり、結晶中ドナ-分子はファン型の配座をとり、二量化している。ファン内のSーS間距離には3.54A〜3.75A程度のものがあり、分子内で相互作用をもつことが予想される。結晶B(組成2:1)は、室温での電気伝導度が0.14Scm^<ー1>で、活性化エネルギ-も5×10^<ー2>eVと比較的小さい半導体である。結晶中ドナ-分子は、ファンを横に開いたような配座をとっている。結晶Bのc軸方向のドナ-分子の積層様式は、折れ曲がった分子が梯子状に連なり、分子間に3.4Aの短いSーS距離が存在することで特徴づけられる。 一方、ドナ-2のCl0_4塩(組成1:1)は室温で金属的挙動を示し、その室温での伝導度は、数Scm^<ー1>である。約130Kで半導体に転移し、その後の活性化エネルギ-は1.9×10^<ー2>eVと求まった。結晶中ドナ-分子は、約90度開いたコンホメ-ションをとり、均一なカラム構造をとっている。また、a軸方向には分子間、b軸方向には分子内の硫黄・硫黄接触が認められ、特異な3次元的な相互作用の存在を示唆している。 以上の実験結果により、ツインドナ-1、2は電導体の構成要素としては、十分な性能を備えていることが明らかになった。
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