研究概要 |
9(pーメトキシフェニル)ー9ーキサンテノ-ル(1__〜)をアルコ-ルおよび水性溶媒中でNd:YAGレ-ザ-第4高調波(266nm,パルス幅7ns)を用いて光照射したところ,370nmに極大吸収をもつキサンテニリウムイオン(2__〜)の生成が観測された。370nmの吸収の減衰は2相の擬一次反応曲線にしたがった。速い反応領域の減衰は(1〜3)X10^4s^<ー1>の速度定数(k_1)に対応し,溶媒の種類や添加求核体の影響をあまり受けなかった。一方,遅い反応は溶媒の極性に依存し,10〜100s^<ー1>の速度定数(k_2)を与えた。また,k_2はOH^ーやRNH_2のような求核体を添加すると,その濃度に比例して増大することから,遅い反応は自由イオンの2__〜と求核体の反応に基づくものと結論された。一方,速い反応は酸の添加によって消失し,遅い反応による変化がそれだけ増大した。以上の結果から速い反応は,イオン対を形成している2__〜とOH^ーのイオン対再結合反応によるものと考えられる。1__〜の9ーアルコキシ誘導体についても同様の現象が観測された。水ージオキサン溶媒中では,速い反応のk_1がアルコキシル基の種類によって変化することが認められ,イオン対再結合反応機構が支持された。 以上のようなレ-ザ光分解によるカルボカチオンの反応を,電気伝導度検出装置によって追跡したところ,遅い反応は電導度の減衰として観測されたが,速い反応に対応する変化はほとんど認められなかった。しかし,さらに速い時間領域に電導度の減衰が観測された。これは,カチオンラジカルと溶媒和電子のような別の分子種に基づくものである可能性があり,さらに詳しい検討を続けている。
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