8族元素ー有機複合系における付加・脱離の反応論的解析

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02231209
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 山本 隆一 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (10016743)
• キーワード: 複合系 / 酸化的付加 / 還元的脱離 / カップリング反応 / 遷移金属錯体

研究概要

遷移金属錯体触媒を用いるカップリング反応は炭素一炭素結合形成反応として有機合成上重要である。本研究では有機ニッケル錯体を用いる芳香族ハロゲン化物のカップリング反応に着目し、付加・脱離過程を含む反応機構の詳細を解明するとともに、その合成反応特に芳香族高分子化合物の合成をおこなった。
Ni(cod)_2をビピリジン存在下DMF中で臭化フエニルと反応させるとカップリング生成物としてビフェニルを生成する。この反応の中間体と考えられるNi(Ph)Br(bpy)を単離し、その反応性について詳細に検討をおこなった。上記カップリング反応の速度論の研究結果とあわせて、以下のような反応経路でビアリ-ルが生成していることを明らかにした。1)ニッケルO価錯体への臭化フエニルの酸化的付加によるNi(Ph)Br(bpy)の生成、2)モノフエニル錯体の不均化反応によるジフェニル錯体Ni(Ph_2)ー(bpy)の生成、3)ジフエニル錯体からの生成物の還元的脱離、DMFのような極性の高い容媒中の酸化的付加や還元的脱離の詳細に関する研究例はほとんどなく、本研究の意義は大きい。
PPh_3存在下Ni(cod)_2を用いた0ージブロモベンゼン、3,4ージブロモチオフエンのカップリングをおこなったところ、環状三量体、四量体がそれぞれ生成した。従来法によるこれら化合物の合成と比較して温和な条件で高い収率を得ることができた。
上記のカップリング反応を1,4ージブロモベンゼン,2,5ージブロモチオフエンに適用したところ、それぞれポリ(1,4ーフエニレン)、ポリ(2,5ーチエニレン)が生成した。これらのπ共役系高分子化合物は電気伝導性高分子として有用であるが、従来法によりるものより高い結晶性を有することがX線回折の結果より明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Takakazu Yamamaot 他: "Comparative studies on Reactions of α,βーand β,γーUnsaturated Amides and Acids with Nickel(0),Palladium(0),and Platinum(0) Complexes.Preparation of New Fiveーand SixーMembered Nickeland PalladiumーContaining Cyclic Amides and Ester Complexes" Organometallics. 9. 2396-2403 (1990)
• [文献書誌] ZhenーHua Zhou Takakazu Yamamoto: "Preparation of NewーStable Anthrylnickel(II) Complexes and Related Aromatic Carbonーcarbon Coupling Reaction" Journal of Organometallic Chemistry.
• [文献書誌] Takakazu Yamamoto,Atsushi Morita,Takaki Kanbara: "Reversible Doping and Undoping Behavior of Poly(2,5ーthienylene) Studied by Xーray Diffractiometry" Chemistry Letters. 2007-2008 (1990)
• [文献書誌] Takakazu Yamamoto 他: "Formation of a New structure of Iodineーdoped Poly(2,5ーthienylene) and Reversible Doping and Undoping Behavior of Poly(2,5ーthienylene) Studied by Xーray Diffractometry" Synthetic Metals. 39. 269-273 (1990)
• [文献書誌] Takakazu Yamamoto 他: "Excimerーlike Emission from Linear πーConjugated Polyー(2,5ーPyridinediyl)" Journal of ChemicalL Society,Chemical Communication. 1306-1307 (1990)
• [文献書誌] H.Sakai,Takakazu Yamamoto 他: "Mossbauer Spectroscopic Study of Fecl_3 Complexes of Poly(Nーmethy1ー2,5ーpyrrolylene),Poly(2,5ーthienylene),and Poly(3ーmethylー2,5ーthienylene) Prepared by NiーCatalyzed Polycondensation" Journal of Macromolecular Science,Chemistry. A27. 1147-1154 (1990)