研究概要 |
研究代表者は有機ケイ素化学における新分野の研究開拓に努力し、多くの新反応や有機合成に関する研究を行っている。反応剤自身がLewis酸性をもち、これにより求核性が増幅された新規複合系反応剤として5配位有機ケイ素反応剤の開発とその有機反応の高次制御、および高次構造を有する有機ケイ素化合物の有機反応論的研究を行った。とくに、トリアルコキシシランを用いた場合、活性化状態と考えられる高配位有機ケイ素化合物が容易に合成できたので,その合成化学への応用や薬化学への展開を目指した研究を行った。 アルコキシシラン/ジオ-ル/アミン系,あるいはアルコキシシラン/アミノアルコ-ル/ジアミン系により容易に5配位ケイ素化合物が得られることを見出した。とくに,アリルコキシシランとカテコ-ルをトリエチルアミン存在下反応することにより,世界で初めてアリルシリケ-トを合成することに成功し,この化合物が全く活性化剤を用いなくてもカルボニル化合物と反応してアリル化生成物を高収率で与えることを見出した。本反応は立体特異的なアリル化反応であることを,光学活性アリルシリケ-トとカルボニル化合物との反応により明らかにし,反応が6員環状遷移状態を経て進行することを説明することが出来た。これは従来の4配位アリルシランを用いるカルボニル化合物との反応の反応機構(antiーS_F^1型遷移状態)とは全く異なる反応であり,有機ケイ素化学に新しいインパクトを与えた。 さらに,新規1,3ー双極子試薬としてアルキリデンアゾメチンイリドの創製を目指した研究を行った。合成した出発物質はNー(Silylmettyl)置換ケテンNSーアセタ-ルである。本化合物はフッ化物イオン存在下積々の親双極子試薬と[3+2]型環化付加反応を起し,対応する複系環化合物を高選択的に与えることを見つけた。
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