1972年に大マゼラン雲で発見された超新星SN1987Aは、その距離が比較的地球に近いこともあり、光だけでなく、X線、γ線などの電磁波、さらにはニュ-トリノにおいても観測され、超新星の爆発機構に対するわれわれの理解を大きく深めた。さまざまな観測を説明するためには、超新星内部にある重元素が星の表面ちかくまて浮き上がり、表面の水素が深く沈みこむという、物質混合が生じる必要がある。その機構として有力なものにレイリ-・テイラ-不安定性がある。われわれはレイリ-・テイラ-不安定の発達の様子を流体力学方程式を数値的に解くことによりシミュレ-ションを行った。簡単のために星は軸対称であると仮定して計算した。野本たちによる前超新星モデルを採用し、星の中心部にエネルギ-を注入して、以後の発展を追った。計算には1729×1729の格子点を用い、デ-ビスの人工粘性を導入したTVD化したラックス・ウエンドルフ法を用いた。計算の結果分かったことは初期モデルに音速の5パ-セント程度の速度ゆらぎを仮定すると、レイリ-・テイラ-不安定性が発達して、きのこ状の特有のパタ-ンが発生し物質混合が生じる。この結果は他のグル-プの結論と矛盾しない。つぎにIbとかIc型と分類される超新星にたいしても、同様の計算を行いやはり物質混合は発生し、光度曲線をうまく再現できることが分かった。ところでこれらの計算の最大の問題は、5パ-セントもの初期速度ゆらぎが果たして存在しうるかという疑問である。レイリ-・テイラ-不安定性には逆カスケ-ド現象というものがあり、成長率の大きい短波長のゆらぎがまず成長して、そのエネルギ-が長波長に移行する可能性がある。われわれはレイリ-・テイラ-不安定性の性質を研究するため、空間2次元の場合に限定して、ゆらぎの成長率などを調べた。その結果、逆カスケ-ド機構ではゆらぎの起源は説明できないことが分かった。
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