研究概要 |
現在臨床的に使用されている抗HIV薬はヌクレオシド誘導体のアジドチミジンのみである。しかしこのものは骨髄抑制を伴う重篤な貧血などの副作用を有しARC患者に対する長期投与を行うには問題の多い薬物である。この問題点を克報すべく選択毒性の高い抗HIV活性をもつヌクレオシド誘導体を合成するがこの研究の目的である。 現在まで数多くのヌクレオシド誘導体が合成されその効力が検定されているが活性のある誘導体は極めて少ない。これらが活性を示すには、5'位水酸基が宿主のリン酸化酵素によりリン酸化を受け、実に5'ートリリン酸体に代謝されHIVのもつ逆転写酵素を阻害する必要がある。実際には、最初のモノリン酸化酵素の基質特異性が最もきついて考えられている。この酵素が基質認識を行う場合、塩基部と5'位水酸基の距離が重要と考え、糖部の立第配座によりこの調整を行おうと考えた。今回は、ウリジン、5ーメチルウリジンから出発し、種々の2',3'ージデオキシー2'ーCー置換ピリミジンヌクレオシドの合成を行った。 今回合成した一連の化合物につして抗HIV活性を測定した(福島県立医大・伊藤助教授との共同研究)がいずれの化合物も活性を示さなかった。Xー線結晶解析およびNMRによる立体配座解析の結果これらはいずれも3'ーendo型をとりアジドチミジンとはその立体配座が異なることが明らかになった。
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