マウス血清中にHIVー1の感染性を抑制する物質が存在することを見出し、その物質的性状に関して以下の結果を得た。1、ウイルス(Kenya株)と同時に階段希釈したマウス血清を培養中に添加すると、少なくとも1:128培の希釈で、5日後におけるMOLT4細胞の細胞融合の発現やTAII 1 細胞での蛍光抗体染色陽性の感染細胞の出現が、ほぼ完全に抑制された。2、本抑制活性は正常マウス(BALB/c、CBA/J、C3H/HeN、C57BL/6ByA、C3HeB/Fej)の他に、C5欠損マウス(A/J、AKR/N、DDD/1、DBA/2)、ヌ-ドマウス(KSN)、SCIDマウス血清中にもほぼ同等に認められた。3、マウス血清はHIV細胞への吸着には影響を与えなかった。しかし、細胞に対してよりはウイルス粒子に直接作用をしていることが示唆された。4、抑制活性は56℃30分処理、EDTA及びEGTA処理、トリプシン処理によって消失した。5、透析、補体を消費するcobra venom factor処理では、折制活性は消失せず、血清によるvirolysisも見られなかった。6、マウス血清をイ-ストマンナで前処理すると抑制活性は消失した。以上により、マウス血清中のHIVー1抑制物質はマンノ-ス結合蛋白質(MBP)であることが示吸された。現在、マウスMBPの単離精製、その抗ウイルス活性をヒト、ラットなど他種MBPと比較することを行っている。
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