研究課題/領域番号 |
02235215
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研究機関 | (財)東京都神経科学総合研究所 |
研究代表者 |
保井 孝太郎 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物学研究部門, 副参事研究員 (90073080)
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研究分担者 |
宮本 道子 (財)東京都神経科学総合研究所, 微生物学研究部門, 主事研究員 (40190821)
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キーワード | JCウィルス / AIDS / 調節領域遺伝子 / エンハンサ- / 進行性多巣性白質脳症 / 遺伝子変異 / PML |
研究概要 |
AIDS患者には、脱髄疾患である進行性多巣性白質脳症(PML)が高率に発生してきている。PMLは、JCウィルスが脳内のオリゴデンドログリア細胞で増殖することによって起ることが、明らかになっている。JCウィルスは、成人の70%以上に感染しているにもかかわらず、きわめて限られた宿主域と増殖の特異性を持っている。JCウィルスの遺伝子の転写を調節する遺伝子領域は、JCウィルスが感染増殖できる宿主細胞の種類と増殖の強さに関わっていることを明らかにした。AIDS患者に高率にPMLが発生する要因を明らかにするために、PMLを発症し死亡したAIDS患者脳などから、JCウィルスを分子クロ-ニングして調節領域遺伝子の構造を調査した。日本人およびアメリカ人AIDS患者脳などからクロ-ニングしたJCウィルス調節領域遺伝子には、いずれも変異がおこっており、その変異は、遺伝子の転写を促進するエンハンサ-配列を新たにもたらすものであった。JCウィルスは、成人の70%以上に感染しており、持続または潜伏感染状態にある。体内にひそんでいるウィルスの再活性化と尿中へのウィルスの放出が多くの人で起っており、加令とともにその頻度がこることが明らかとなってきている。尿中に放出されたウィルスとPML患者脳からクロ-ニングしたウィルスの調節領域を比較したところ、PML患者脳からクロ-ニングしたJCウィルスの調節領域は、いずれも特定領域の欠失と挿入が起っており、新たなエンハンサ-配列を生じる変異が起こっていることが明らかとなった。また白血球中にJCウィルス遺伝子を検出できた。これらの結果から、HIV感染によって、JCウィルス調節領域遺伝子に、高頻度に変異が起こり、その結果病原性の変化したJCウィルスが出現してくることが予想された。
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