研究概要 |
今年度は、いくつかのグル-プの研究成果が、論文という形で一流誌に掲載された年度にあたっている。岡田は、サケ科の系統の中で、いくつかのレトロポゾンが、進化のある特定の段階でのみ特異的に増幅していることを示した。例えば、SmaIファミリ-は,シロサケとカラフトアスのみに、FoKIファミリ-は,イワナ属の魚類に,HpaIファミリ-は、サケ科魚類全部にといった具合である。今後このレトロポゾンの系を用いて、100%正しい系統関係を樹立できる可能性がひらけたこと、更にレトロポゾンの増幅の分子機構について明らかに出来る系が確立したことで、今後の進展が期待される。坂本は、ショウジョウバエの性決定の過程で起るアルタナティブスプライシングの分子機構を明らかにした。すなわち、Sxl遺伝子の産物が、tra遺伝子からの一次転転産物の3'スプライス部位に結合することにより、アルタナティブスプライシングを起し、メス型のtraの産物を産生するというものである。本研究は,アルタティブスプライシングの分子機構を解明した最初の例であり、性決定のカスケ-ドの中で、その上流の遺伝子産物が、アルタナティブスプライシングを制御するRNA結合性のトランスアクティング因子であることを証明したという点でも大変興味深いものである。菊池は、コピアRNAの逆転写の際に,メチオニンtRNAの5'側の半分子がプライア-として用いられることを明らかにして来たが、今回そのtRNAの切断が,tRNAのプロセシングを解媒するRN_<ase>Pによって行なわれる可能性を示した。これは、tRNAの断片が生物活性をもつことの最初の例であり、他のtRNA様構造の起原についても示唆を与えるものである。
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