研究概要 |
骨格筋の筋節は太いフィラメントと細いフィラメントから成っていて、筋収縮はこれらのフィラメントが互いに滑り合うことによって起きる。太いフィラメントはミオシンを、細いフィラメントはアクチンを各々主成分としている。ミオシン分子は、一方の端にSー1と呼ばれる二つの球状の頭部をもち、筋収縮のエネルギ-源となるATPやパ-トナ-・タンパク質のアクチンは共にSー1部分に結合する。ATP結合部位とアクチン結合部位はSー1上の遠く離れた異なった場所に局在すると考えられているが、これら二つの部位は一方で起きた構造変化を他方へ伝播させることによって互いに“通信"し合っている。筋収縮の滑り運動の分子機構を理解するためには、この通信機構を明らかにしなければならない。 我々はミオシンSー1の50Kドメインが、ATPを結合する23Kドメインとアクチンを結合する20Kドメイン間の通信装置として働くという仮説を1986年に提出した。この仮説はグルタルアルデヒドによる化学架橋反応の結果を基にして立てられたが、他の方法によってこの説が正しいか否かは再検討されていなかった。今回、蛍光試薬である5ー(4,6ージクロロトリアジニル)アミノフルオレセインを用いた差螢光ラベリング法で調べたところ、ミオシンSー1にATPが結合すると50Kドメインは他のドメインと協秦的に構造変化を起こすことが明らかとなり、我々が以前提出した仮説が正しいことが裏づけられた。
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