研究概要 |
アクチン・ミオシン両蛋白質相互作用による滑り運動の発現過程において、アクチン分子構造の変化と運動性の関連を、分子内切断に行うことによって調べた。アクチンを種々蛋白質分解酵素により限定分解し、特定の場所に切断を入れる。これら切断アクチンは塩添加により重合して線維構造を形成する。しかし、プロテア-ゼKによる切断ではファロイジン存在下でのみ重合した。電子顕微鏡観察から、これらアクチン線維は全て二重らせん構造を持ち、HMM修飾により矢尻構造を形成、形態的には未切断アクチンと変らなかった。だが、ミオシンATPア-ゼの活性化は小さく,特にサブチリシン処理では1桁、プロテナ-ゼK切断では2桁低い活性化しか見られなかった。 骨格筋HMMをコロジオン膜を張ったカバ-グラスに付着させ,in vitno motility Assayを行ったところ、ほヾアクトミオシンATPア-ゼ活性に対応した滑り運動が見られた。サブチリシン処後アクチンでは約3割の線維が運動し、他は結合状態で止っている。結合している線維が滑り始める或はその逆が観察されることから、化学エネルギ-の力学エネルギ-への変換過程がスム-スに進まなくなっている事が判る。又、プロテナ-ゼK処理アクチンは、殆んど運動性を示さなかった。 骨格筋ミオシンの代りに車軸藻ミオシンを用いた運動アッセイでは、用いた6種類の切断アクチは全て非常によい運動性を示した。特に、骨格筋ミオシンでは殆んど運動性を失ったプロテナ-ゼK処理アクチンですら未処理アクチンと変らない運動性を示した。この事は、車軸藻ミオシンと骨格筋ミオシンではアクチンの相互作用部位が異ること、化学→力学エネルギ-変換の作用機作が非常に異なったものであることを示唆する。
|