Alzheimer病の脳におけるグルタミナ-ゼの変化を抗体を用いて組織学的に検討するために、ヒト脳のグルタミナ-ゼを認識するポリクロ-ナル抗体を用いて、剖険脳を免疫組織化学的に検索し、Alzheimer病の脳と対照脳を比較した。 1)特に臨床的に脳疾患を認められなかった剖険例数例の脳を用いて、大脳皮質の種々の部位におけるグルタミナ-ゼ免疫活性を調べた。運動野のBetz細胞を含めて多くの錐体細胞に中等度から強度のグルタミナ-ゼ免疫活性が認められた。さらに、非錐体細胞と考えられるニュ-ロンにもグルタミナ-ゼ免疫活性が見いだされ、グルタミン酸作動性のニュ-ロン以外の神経細胞にもグルタミナ-ゼが存在している可能性がある。 2)昨年、一Alzheimer病例の大脳皮質のグルタミナ-ゼ免疫活性の所見を報告したが、今回はさらに四例の剖険例を加えた。四例とも中等度から高度のAlzheimer病変を示していたが、その内三例はグルミナ-ゼの酵素活性、免疫活性ともに著名に低下していた。詳しく調べた一例のおいて、グルタミナ-ゼの酵素活性の低下の程度が大脳皮質の各部位で異なっており、その分布は免疫活性の分布と良く一致していた。しかし、免疫活性の低下の所見は昨年報告した一例と異なっているところも多く、Alzheimer病におけるグルタミナ-ゼ免疫活性の変化が多様であることが示唆された。 対照脳と比べることによってAlzheimer病の大脳皮質でグルタミナ-ゼ免疫活性が低下することが明らかとなったが、その変化には症例間でのばらつきが大きいことが分かった。従って、さらに症例を増やして検討を続ける必要がある。
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