研究概要 |
本邦の家族性アルツハイマ-病(以下FAD)原因遺伝子の単離に向けた予備研究として、本邦FADの全国調査を行う共に、これまでの文献報告例も併せて遺伝・疫学的検討を行った。計923医療機関に行った第1次調査で、有効回答数246を得た。回答率は26.7%であった。全国調査により新たに18家系を収集し、既報告の21例と併せて39家系となった。各家系の診断は大部分が大学附属病院でされており、一般病院の場合も何等かの形で大学附属病院等の専門の医療機関が関与していた。FADの総患者数は141名であったが、これには病理解剖により確定診断が行われたもの、臨床的に確定診断されたもの、伝聞により推定されるものを含む。男女を明記していない情報もあるため、男女患者数の合計は総患者数のそれと一致しないが、男67名、女69名であり、男女比は1:1.02となった。両親が患者と正常の組合せによるFAD家系の性別分離比は、男=0.60,女=0.57で全体では0.59であった。浸透率は0.58/0.50=1.17となった。以上の結果より、本邦のFADは完全浸透の常染色体性優性の遺伝病であると考えられた。家系内で少なくとも一症例が病理解剖によりアルツハイマ-病と診断された家系は19家系(49%)であった。全患者の平均発症年齢は、43.9±8.7才(n=94)、平均死亡年齢は51.4±9.8才(n=85)、平均罹病期間は6.7±3.6才(n=89)であった。家系内の発症年齢の幅は狭く、白人のFADと同様に明らかに家系間で発症年齢に有意差が認められた。しかし、欧米で報告されているような発症年齢が60才以上の晩期発症型(late onset type)FADは、今回見い出されなかった。遺伝子解析については、FAD構成員のDNAについて、白人の早期発症型FAD遺伝子と密接に連鎖する多型性DNAマ-カ-を利用した解析を行った。D21S13は、PCRーRFLPs(EcoRI,TaqI)を利用した。今後、FAD家系を増して遺伝子解析を進める予定である。
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