研究概要 |
<研究目的>___ー:被子植物のオルガネラDNAの子孫への伝達様式は母性遺伝と両性遺伝に分けられる。これまでの細胞学的研究により、母性遺伝は花粉内で精細胞が形成された後にオルガネラDNAが選択的に分解されることが原因となって起こり、両性遺伝は分解されないことで起こることが示唆された。本研究の目的は、実際にどの様な酵素がオルガネラDNAの分解に関与するかを明らかにすることであった。 <研究経過>___ー:母性遺伝型植物としてイネ(<Oryza>___ー <sativa>___ー)を、両性遺伝型植物としてモンテンジクアオイ(<Pelargonium>___ー <zonale>___ー)を材料に用いて、花粉形成から受精に至る各過程におけるオルガネラ DNAの挙動をDAPI蛍光染色法で調べるとともにヌクレア-ゼの活性を調べた。イネでは花粉の成熟とともにCa^<++>要求性(MW:23kD,24kD,31kD,34kD,37kD)、Zn^<++>要求性(MW:15kD,29kD,51kD),Mn^<++>要求性(MW:18kD,24kD,33kD,39kD)の各ヌクレア-ゼが存在したがMg^<++>要求性のヌクレア-ゼは見られなかった。類似のヌクレア-ゼは他の母性遺伝型の植物にも存在したが、モンテンジクアオイには、Ca^<++>,Mg^<++>,Zn^<++>,Mn^<++>要求性のいずれのヌクレア-ゼも検出できなかった。また、両性遺伝型を示すシャコバサボテンにもおいてもこれらの酵素活性が認められなかった。この結果から、母性遺伝は、金属イオン要求性のヌクレア-ゼの活性化が原因となって起こり、両性遺伝はこれらの酵素の活性がないか極めて低いために起こると推定した。両性遺伝型植物のオルガネラの挙動の解析は一段と重要となった。
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