1)高分子性花成誘導物質の化学的正体を知るために、アオウキクサ抽出物から通常のタンパク質精製の手法で、活性物質を精製した。ゲル濾過(BioGelA1.5m)で分離される約120kDaの成分は、イオン交換(Pharmacia MonoQ)で2つの成分に分離された。そのうち、約0.8MNaClで溶出される成分は、逆相クロマト(Pharmacia PepーRPC)で単一のピ-クに分離後、N末側のアミノ酸配列が20個決定できた。 2)そのアミノ酸配列を参考にして、ヌクレオチドを合成し、それをプロ-ブとして、アオウキクサcDNAライブラリ-をスクリ-ニングしたところ、約1.4kbおよび0.8kbのpositive cDNA cloneを得た。現在、その構造を解析中である。 3)上述の研究経過のなかで、動物起源の既知タンパク質のなかに、弱い花成誘導活性を示すもののあることが判明した。薬品メ-カ-より購入したタンバク質標品をさらに精製したところ、タンパク質そのもが花成誘導活性を示したので、その精製タンパク質をTrypsin又はArginylendopeptidaseで処理後、逆相クロマトで分離したところ、そのうちの特定の断片のみが、花成誘導活性を示した。このペプチドは、遇然植物界の活性ペプチドと類似の構造を持っていたと考えられる。 4)ウキクサに対して花成誘導活性を示すタンパク質は、植物組織中に通常高分子状態で検出されるが、植物が花芽を形成する条件、たとえばアサガオ・アオウキクサでは短日またはN欠条件、下で顕著に低分子化していることが観察された。この現象は、プロテア-ゼの人工基質を用いてもプロテア-ゼ活性の増大として観察されるので、植物が花芽を形成する条件下で、ある種のプロテア-ゼが誘導され、生理学的に活性なペプチド断片が遊離され結果として花芽が形成される、という機構が共通に存在する、という可能性(仮説)が強く示唆される。
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