研究概要 |
非経験的分子軌道法を用いて、1.Li,Be,Na,Mg原子、イオンの水和、2.Na_2の水和と反応 3.Al,Al^+の水和 4.水和Be^<2+>イオンの配位水交換反応機構の研究を行なった。1.Li,Be,Na,Mg原子、イオンの水和の研究では、(1)Naの一水和物で実験的に観測されているのと同様に、Liの一水和物についても光電子スペクトル中にLi一酸素の縮伸動の0ー0バンドを観測できる可能性があること、(2)これらの金属の水和構造は、中心金属の原子価軌道電子数により分類できること、(3)Beイオンの水和エネルギ-は一価でも二価でも水和エネルギ-に対して非加成的で、Be^+,Be^<2+>では配位水と強く化学結合していること等を明らかにした。2.Na_2の水和と反応の研究では、(1)一つのNa原子に片寄って水和する構造が最も安定であること、(2)水和によりNa間の結合距離は伸びNa_2は分極すること、(3)Na_2の分極は水和数増加に伴ない徐々に進行するのではなく、水が三つつくと急激に進行すること、(4)Naと水の酸素とが直接結合したNa_2の四水和物の安定構造はなく、Na_2はイオン解離して、Na陰イオンと水和Na陽イオンに至ること等を明らかにした。3.Al,Al^+の水和の研究では、Beでの過去の計算結果と同様に、水和原子、イオンの安定構造では原子価電子数に古典的なオクテック則が成立することを示した。1.〜3.の研究を通じて金属と水分子の錯体やクラスタ-では溶液中での金属の化学とは安定性、構造、反応性等の面で異なる挙動が見られることを示した。4.水和Be^<2+>イオンの配位水交換反応機構の研究では、第一層の水五水子のみを考察した計算で会合型の遷移構造をとることを示し、活性化体積の実測値から予想されている機構をけたが、実に多数の溶媒を考慮した新しいモデル作りが必要であることもわかったので現在検討中である。
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