研究概要 |
高次の脳機能のモデル化には,ボトムアップ的な情報処理に留まらず,トップダウンな「知識」主導型の機構を内在した神経回路網モデルを想定する必要がある.神経回路網利用システムにトップダウン処理を組み込む幾つかの手法のうち,脳の高次機能の実現には,トップダウン情報(自他の系の処理結果)を入力に加えるフィ-ドバック相互結合型回路網が適切であるといえる.本年度は,高次視覚機能の一つとして3次元画像理解を取り上げ,実験システムを作成し,その有効性を確認した. [1]線画の3次元解釈のための相互結合型神経回路網の実現 線画の各頂点に神経回路網のノ-ド(解釈ノ-ド)を,頂点間の拘束にノ-ド間結合を対応させることにより,線画の3次元解釈問題を相互結合型神経回路網に写像した.多面体を対象に,直交性や平行性など幾何学的拘束を用いて神経回路網のエネルギ-を定義し,これを回路系の動作を通じて最小化することにより,良好な形状復元結果を得た. [2]神経回路網による物体の幾何形状の仮説生成機構の実現 [1]では形状復元のみを神経回路網の計算機構により実現し,拘束条件は人間の手で与えた.しかし,人間は末知の対象に対しても拘束条件の決定も含めた処理により,単眼画像からでもその形状を推測することができる.このような画像解釈には,対象物の形状に関する仮説生成の機構を有し,形状復元をその検証機構とする仮説検証機構が要求されるとみなしうる. このような機構を神経回路網による実現するため,局所特徴(角,面方向等)に対する拘束条件(直角,水平,鉛直等)を表すノ-ド(仮説ノ-ド)を用意し,解釈ノ-ドと仮説ノ-ドの状態値によって神経回路網の全エネルギ-を再定義し,これを最小化する実験により良好な動作が確認できた.
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