研究概要 |
前頭前野と海馬を連絡する神経回路として、前頭前野眼窩面の14野と海馬台を連絡する神経回路と前頭前野内側面の25野と海馬台を連絡する神経回路が報告されている(Roseneとvan Hoesen,'77)。前頭前野の外側面に関しては、GoldmanーRakicら('84)は46野と8野が嗅内野(28野)の一部並びに海馬前台の尾側部と双方向結合すると報告しているが、彼らが海馬前台の一部と記載する領域はVogt('76)がretrosplenial cortes(膨大部後皮質)の一部と見なしている皮質領域である。我々の今回の研究目的は、前頭前野の外側面すなわち8野、46野、12野、9野、10野、と海馬とを結合する皮質性神経回路網を探すことである。 マカクサルの帯状回(24野と23野に分かれる)は前頭前野と強力に結合している。他方、帯状回は海馬台・嗅内野と結合していることが報告されている(VogtとPandya,'87)。そこで、今回は3頭のニホンサルを使って、WGAーHRPを手術方法を工夫して直視下に24野に注入し、大脳皮質の全領域に渡って、HRP標識神経細胞とHRP標識神経終末の分布を検索した。標本の作製において、一部はビブラト-ムを用いた。 WGAーHRPを直視下に注入したので、24野の直上の補足運動野あるいは運動野へWGAーHRPが拡散することはなかった。WGAーHRP標識神経細胞と神経終末は常に共存した。ただし強弱の差はあった。大量の標識神経細胞と標識神経終末が出現した皮質領域は、前頭前野、特に46野、23野、pGm野、上側頭溝の上壁、嗅内野、海馬先台であった。しかし、海馬台と海馬前台に全く標識神経細胞と標識神経終末は見られなかった。中等度に標識神経細胞と標識神経終末が出現したのは運動前野、7野、島であった。少量のHRP標識神経細胞と神経終末が出現した皮質領域は、運動野、5野、外側溝に対向する頭頂葉皮質領域、であった。
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