研究概要 |
前骨髄性白血病細胞株HL60を用いて骨髄球系細胞分化とcーfgrチロシンキナ-ゼの発現活性化との関連について検討し以下の知見を得た。(1)HL60をジメチルスルフキシド(DMSO)で処理すると顆粒球へと分化するが、分化に伴いcーfgrの発現を認めた。(2)cーfgr発現の時期はコミットメントの時期より後であり、最高の発現は分化完了時期であった。(3)組換えレトロウイルスを用いてcーfgr cDNAをHL60に導入・発現したが、HL60の表現型に何の変化ももたらさなかった。またDMSOによる顆粒球への分化様式にも変化は無かった。(4)HL60に過剰発現させたcーfgrのチロシキナ-ゼ活性は負に制御されているが、DMSOにより分化を誘導すると分化の後期にcーfgrチロシンキナ-ゼの活性化を認めた。以上の知見よりcーfgrチロシンキナ-ゼは骨髄球系細胞分化の初期過程よりも分化後期あるいは分化後に機能する可能性が強く示唆された(論文投稿中)。 成熟好中球におけるcーfgrキナ-ゼの機能を知る目的でcーfgrキナ-ゼ活性化シグナルを検討した。fMLP刺激後5〜30秒、GーCSF刺激後5〜15分で好中球中cーfgrキナ-ゼ活性の上昇が認められた。GーCSF刺激ではcーfgrチロシン残基のリン酸化の上昇も認めた。以上よりfMLP及びGーCSFシグナル伝達過程においてcーfgrキナ-ゼが機能する可能性が強く示唆された(未発表)。 骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄白血病(CML)患者の好中球cーfgrキナ-ゼの発現及び活性を調べた。MDS8例中3例、CML4例中1例にcーfgrキナ-ゼ活性の低下が認められた。cーfgrキナ-ゼ活性低値を示す症例の殆どは好中球アルカリホスファタ-ゼ(NAP)低値を示した。MDS,CMLにおける好中球機能あるいは分化の異常と、cーfgrキナ-ゼ活性低値の関連が示唆された(未発表)。
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