研究概要 |
(1)エ-テル麻酔下に成獣ラットから心臓を摘出し、心房を細切コラゲナ-ゼ処理により細胞を単離し,シトシンアラビノシド存在下に10%ウシ胎仔血清加M199培地中でラミニンをコ-トしたガラス器内で培養すると、3日目に単一心筋細胞の拍動が始まり,7〜8日目にはほぼすべての細胞が周囲と同調した拍動伝達を示すようになった。この状態の培養細胞層を蛍光色素ルシファ-黄の存在下に尖鋭なナイフ刃で数条のスジを彫み入れ,2分後に色素を洗い流して固定し、蛍光顕微鏡で観察した。通常の培養下では損傷縁から5〜6細胞列にまで色素が拡散して細胞質が蛍光を発していた。EGTA存在下やフォルスコリン投与では伝幡色素は10細胞列以上に及ぶこともあった。一方高カルシウム存在下やTPA投与後では,2〜3細胞列までに弱い蛍光を認めた。以上のことから、この方法が心筋細胞間の興奮機能伝達における調節因子の作用を検討する上で簡便かつ有用な手段となることが明らかになった。 (2)次に心筋細胞におけるギャップ結合構造の形成と分布局在を標識するため特異的抗体の産生を行った。心筋型ギャップ結合膜蛋白コネキシン43のcDNAによるアミノ酸配列から,細胞膜をはさんで外側領域と想定されるN鎖から47ー54の8アミノ酸、および細胞内と想定される101ー113の13アミノ酸のそれぞれ合成ペプチドに対するウサギのポリクロナル抗体を得た。これらは免疫ブロットにより心筋型に特異的認識を示し,肝型とは反応を示さない。細胞内領域標識の抗体は,培養細胞の接着部位および心筋凍結切片の介在板部に蛍光標識を示す。一方細胞外面領域の特異抗体は,培養2〜3日目の接合形成時には,細胞内核周囲などに標識を認めるが,7〜8日目には接合部をアルカリ尿素処理によって離開しないと蛍光が現われず,細胞間の接合形成機構を解析する有力な手段となる可能性が大きく,現在詳細な検討を行っている。
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