6種類のヒトアクチン遺伝子のうち唯一DNA構造が決定されていなかった胃壁平滑筋アクチン遺伝子のcDNAとゲノム遺伝子のクロ-ニングを行なった。その結果、ヒトアクチン遺伝子群の進化過程の仮説が考えられ、その過程は発現組織の発生進化とよく一致した。マウスの培養筋原細胞のC2細胞はinvitroの筋形成過程で他の筋肉系蛋白質と同様に4種類の筋肉系アクチンの発現量が増大する。この細胞を用いて血管平滑筋アクチン・胃壁平滑アクチン遺伝子の発現調節に関与する領域を調べたところ、プロモ-タ-領域及び第一イントロン内に発現制御部位があり、そこにはCArG配列が含まれ、細胞の核抽出液中にCArG配列に結合する蛋白質(CBF)がみいだされる。CArG配列の合成オリゴマ-DNAによる人工変異配列を用いた結果では、このCBFの結合能とCATassayによる発現レベルがよく一致した。C2細胞からcDNAライブラリ-を作成し、CArG配列の合成オリゴマ-をプロ-ブとして結合する蛋白質のcDNA(CBFーA)をクロ-ニングした。しかし。CBFーAをC2細胞で大量に発現させると、CArG配列をプロモ-タ-にもつ遺伝子の発現を低下させ、リプレッサ-として働いた。また、CBFーAはinvitroで各々のCArG配列に結合するが、一本鎖DNAにも強く結合し、C2細胞で見出されるCBFとは性質を異にした。したがった、CBFーAは新奇のCArG配列結合蛋白質であろう。
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