研究概要 |
Na,KーATPaseの各アイソフォ-ムのうち、神経組織特異的に発現するβ2遺伝子および、どの組織でも発現するα1遺伝子について解析を行った。両遺伝子について、5'非転写領域を含む遺伝子断片を、CATまたはルシフェラ-ゼリポ-タ-遺伝子につないだ融合遺伝子を作成し、培養細胞へのトランスフェクションで、プロモ-タ-活性の測定を行った。その結果、次のことが明らかになった。 1.β2遺伝子の5'上流域には2ケ所正の転写制御領域が存在し、B103細胞(ラット神経芽細胞腫)及びC6(ラットアストロサイト-マ)細胞で、ともに転写制御に関与している。そのうち上流側のエレメントはSp1結合部位のコンセンサス配例を有する。下流側のエレメントは、GGAGGCGGGGという配列をコアエレメントとしてもっているが、既知の転写因子の結合部位のコンセンサス配列には見られない塩基配列である。現在、この下流側のエレメントを複数コピ-もつDNAをβ2遺伝子のTATA配列の上流や、tk遺伝子の上流につなぎ、B103細胞や、C6細胞での特異的転写を促進するかどうかを検討中である。 2.α1の遺伝子の5'上流域には、どの細胞タイプ、MDCK(犬賢臓)、B103(神経芽細胞腫)、L6(ラット骨格筋)、3YI(ラット胚)でも正の制御エレメントとして機能する3ケ所のエレメントと、MDCKのみで機能する1ケ所のエレメントを同定した。どの細胞タイプでも作用するエレメント中には、Sp1やATFのコンセン配列が含まれている。 3.両遺伝子中のイントロン部分には、少なくとも種々の細胞タイプで3倍以上プロモ-タ-活性を正または負に変動させるエンハンサ-やサイレンサ-は見出せなかった。
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