研究概要 |
ヒト線維芽細胞の培養上清に放出されるGM_3特異的シアリダ-ゼの精製を培養上清より試みたが、微量であるため精製は困難であった。そこで、ラット肝臓よりGM_3に対して特異性が高いということで知られている形質膜性とリゾ-ム膜性のシアリダ-ゼの精製を試みることにした。材料として無アルブミンラットを用いてリソゾ-ム膜と形質膜を調製してシアリダ-ゼ活性を調べた結果、無アルブミンラットでは対照群のSDラットに較べ、リソゾ-ム膜性シアリダ-ゼの活性亢進が認められた。また、pHに対するリソゾ-ム膜のシアリダ-ゼ活性の変化を調べた結果、無アルブミンラットでは、酸性以外に中性付近に活性ピ-クが認められた。一方、リソゾ-ム内腔性シアリダ-ゼは至適pH4.5であり、無アルブミンラットとSDラットで活性に大差はなかった。無アルブミンラットの形質膜にも中性シアリダ-ゼの活性が認められ、基質特異性はリソゾ-ム膜性の中性シアリダ-ゼと類似しており、ガングリオシド基質に対しては、GM_3に対する特異性がもっとも高く、末端シアル酸残基に特異的に働くことが明らかになった。一方、α2,3シアリルラクト-スとフェツインに対しては特異性が低いという結果を得た。これらリソゾ-ム膜性のシアリダ-ゼを精製するためにEAHーセファロ-ス疎水クロマトグラフィ,シアリダ-ゼインヒビタ-のNeuAcー2enのアフィニティクロマトグラフィにより、ラット肝臓450gから調製したリソゾ-ム膜より、酸性シアリダ-ゼは収量0.22mg、約522倍まで精製された。一方、中性シアリダ-ゼは収量0.81mg,約560倍まで精製された。SDSーPAGEにより、酸性シアリダ-ゼは60Kdakton,中性シアリダ-ゼは72Kdaltonを示した。リソゾ-ム膜の中性シアリダ-ゼは形質膜の中性シアリダ-ゼと類似する点が多く、同一酵素の細胞内トラフィックにより局在性の変化が示唆された。
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