研究概要 |
本研究は、植物ウイルスの増殖能力を利用して、有益な外来遺伝子産物を大量に植物で生産する系を確立することを目的としている。Brome mo saic virus(BMV)は3種のRNA1,2及び3からなり、それぞれRNA複製酵素(1a,2a)、細胞間移行(3a)及び外被蛋白質(cp)遺伝子をコ-ドしている。まず、1a及び2a遺伝子の形質転換植物を作製した。この植物のプロトプラストにRNA3を接種したところ、ウイルスが接種された場合と同程度の外被蛋白質が合成された。すなわち、ウイルスのRNA複製酵素を植物の染色体DNAに組み込み、その翻訳産物によって、ゲノムRNA3だけが独立に複製され、その遺伝子産物が合成されたことになる。つぎに、どのRNA分子を用いれば最も高い安定した蛋白質合成が得られるかを調べるため、1a,2a,3a及びcp遺伝子のcoding領域をreporter遺伝子であるβーglucuronidase(GUS)に置換した。BMVの各遺伝子領域及びGUS遺伝子の翻訳開始部位と5'側配列をKunckel法を用いて改変し、<Nsi>___ーI部位を導入した。<Nsi>___ーI処理後、平滑末端したウイルス遺伝子に同様の処理をしたGUS遺伝子をライゲ-ションし、1a,2a,3a及びcp遺伝子を完全にGUS遺伝子に置換した。T7プロモ-タを用いて、GUS遺伝子を含むウイルスRNAを合成した。これらのウイルスRNAを、1a及び2a遺伝子を発現する形質転換植物プロトプラストに接種した結果、3a環伝子をGUS遺伝子に置換した系で高いGUS活性が認められた。さらに、現在各BMV遺伝子をGUS遺伝子に置換したキメラ遺伝子の形質転換植物体を作製し、RNA複製酵素を発現している形質転換植物と交配することによって、植物個体およびカルスの外来遺伝子の産生について追跡している。
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