研究概要 |
天然多糖の潜在的エリシタ-活性の開拓とその組織培養系,特に研究が進んでいない脱分化初期組織を用いた有用物質生産に対する応用を目的としてマメ科植物をモデルに脱分化初期組織におけるシンク細胞からソ-ス細胞への相互変換機構を解析した。 1.アルファルファ子葉組織に含まれる蛋白質を脱分化後経時的にSDSーPAGEにより分析すると0〜7日目にかけて顕著な変動が見られ,それ以降は泳動パタ-ンに変化はみられなかった。子葉組織を脱分化後経時的にG1cβ→3G1cβ1→6G1c結合を持つラミナラン水溶液(500μg/m1,48hr)に浸漬し,誘導されるフラボノイドの細胞内蓄積量・細胞外排出量をHPLC分析した。その結果,メディカルピンが誘導されたほか,生合成的に初期段階に位置する4',7ーdihydroxyflavanoneと4',7ーdihydroxyflavoneに蛋白質変動に対応した顕著な変化がみられた。両化合物は0〜5日目に著し誘導された。しかし7日目以降はほとんど誘導されなかった。フラバノンは細胞内蓄積量に比して細胞外排出量が約3倍を示し,フラボンは誘導初期(0〜3日目)は細胞外に排出されるが,5日目には細胞内に保持された。 2.G1cNAcβ1→4G1cNAc結合を持つキチンをキチン資化性放線菌菌体で処理することにより得られたキチン分解物(100μg/m1,24hr)およびG1cNβ1→4G1cN結合を持つキトサン水溶液(4mg/m1,24hr)でエンドウ上胚軸組織を脱分化後経時的に処理し,誘導されるフラボノイド蓄積量をHPLCで定量した。6日目には母植物を大幅に上回るピサチンの蓄積が認められた。4〜12日目にかけてピサチンと酷似したUVスペクトルを示す成分の顕著な蓄積が見られた。この成分を糖断片で刺激した脱分化6日目のエンドウ上胚軸から精製・単離し構造解析したところ,報告例のない2ーhydroxypisatinであった。
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