DnaA蛋白は、その遺伝子の変異が染色体複製の開始を特異的に阻害するものとして大腸菌で最初に単離された。我々は、dnaA遺伝子とその結合配列(DnaAーbox)が枯草菌、シュ-ドモナス、ミクロコッカス、マイコプラズマにも保存されており、真正細菌で普偏的に染色体の複製を制御する重要な蛋白であることを示してきた。しかしながら、その機能を担う蛋白構造の詳細は不明であり、本研究はその解明を目標とした。 2.5細菌のDnaA蛋白のアミノ酸配列を比較した結果、Nー末端より、約60アミノ酸からなる中程度に配列が保存されたドメインI、細菌毎に長さが異なり(40ー100アミノ酸)、保存性が認められないドメインII、約230アミノ酸からなりATP結合配列を含む高程度に配列が保存されたドメインIII、約100アミノ酸からなり機能不明の配列が保存されているドメインIVの4ドメインからDnaA蛋白が構成されると考えられることを見いだした。それを検証するために、枯草菌DnaA蛋白の限定プロテア-ゼ処理によるドメイン構造の解析を行った。その結果、ドメインII、IIIの境界とIII、IVの境界に感受性部位があり、予想されたドメイン構造が正しいことが示された。さらに、ドメインIVが失われるとDNA結合能が失われることが示された。 3.大阪大学工学部助手(現東京工業大学助教授)三木邦夫氏との共同研究により枯草菌DnaA蛋白の結晶化の試みを開始した。そのため、有効な沈澱剤、蛋白濃度、pH等の結晶化条件の検索を進めているが、現在のところ成功していない。DnaA蛋白が高濃度で会合する傾向があることが問題となっており、今後その原因となるドメインの同定とそこへの変異の導入を試みたい。さらに、熱的により安定な蛋白を得るため、好熱性細菌のdnaA遺伝子のクロ-ニング、大量発現・精製系の作成を計画している。
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