研究課題
昨年の成果を踏まえ、本年五月に中国思想史辞典採用項目の第三次原案を作成し、それら二千以上の概念用語を、特A・A・B・Cの四段階に振り分ける作業に入り、「宇宙と自然」「人間と道徳」「社会と政治」「宗教と民俗」「学術と知識」「文化と技術」「文化と芸術」の七分野につき研究班を編成して、それらを成し遂げた。その上で研究分担者全員に特A・A項目のうち、一ないし二項目を割り当て、400字詰原稿用紙にして、特A=15枚、A=5枚を所定の期日までに書き上げることを決め、7月に本年度第一回の「編集全体会議」を開き、各人の原稿の内容検討を始めた。本研究の最大の特色は、たとえば「社会と政治」分野の特A項目である「公・私」が先秦から近現代までのあいだにどの様な意義上の展原を見せたか、という通時的な流れを、各時代を専門分野とする各研究担当者が相互に討議を重ねて連携するところにあるが、この全体会議では実際に古代の研究者と中世・近世の研究者がそれぞれ極めて有意義な共同討論を繰り広げた。この全体会議は、九月、十月にも重ねられ、その結果の一部は別の報告書に見られる通りである。この討議を重ねるうち、特Aを15枚に限定することは、内容の叙述に大きな制約が加わり、せっかくの共同研究が活かされないということが明らかになり、むしろ特Aの30数項目にA項目の重要なものを加えた約200項目を、特Aについては30〜40枚、Aについては15〜20枚の原稿を書き、全体を(1)「宇宙と自然」「人間と道徳」、(2)「社会と政治」「宗教と民俗」、(3)「学術と知識」「文化と芸術」「科学と技術」の三分冊にまとめ直し、出版することがよいのではないかという意見に傾き、その方向で以後、作業を続行する予定である。