研究分担者 |
茂沢 方尚 駒沢大学, 文学部, 講師 (00052530)
広岡 公夫 富山大学, 理学部, 教授 (30029467)
西田 宏子 根津美術館, 学芸課長
所 理喜夫 駒沢大学, 文学部, 教授 (30052418)
大橋 康二 佐賀県立九州陶磁文化館, 学芸員
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研究概要 |
肥前磁器の研究に,近来考古学研究者が多くなったことは良い傾向といえる。しかし,その時代決定・技術の編年に関しては,美術史研究者・理学的年代研究者の発言を専ら受入れる形での進み方である。このたびの研究にあっては,考古学・文献史学・美術史・理学の各分野からの提言を集め,分析し,検討して,肥前磁器の根本的な研究方法を創りたい。と考えた。その目的に沿うて,有田町南川原所在の窯ノ辻窯址群の発掘調査を行った。本遺跡を採りあげた理由は次のとおりである。 1.本遺跡は,古くから文献に見える著名な窯址群である。2.南川原は,寛文年間(1661〜1673),鍋島藩窯が置かれた地域である。3.窯址群の傍らに「寛文三年」の石碑があり,窯と関係があると考えられる。4.17世紀前半と位置付けできる磁器片が表面採集できる。5.幕末の磁器片も表面採集できる。 方 法。窯址群を横断する4m×50mの調査区を設定し,各窯の築窯方法と各窯の新旧関係を精査する,という方法をとった。 成 果。本窯址群は5窯が築かれていることが判明した。古い方から,G→F→E→D→D新窯である。本窯址群中最古のG窯は,寛文以前,遅くても1640年代には焼成を開始していたことが,有田最古の磁器窯とされる天狗谷古窯発掘調査の成による知見から判断できる。また,最新のD新窯は,幕末特有の窯様式を具えていることが判った。 今後の計画。出土資料には,窯廃棄時期の床直上の資料の他に物原の資料も多い。この資料群を整理調査し,さらに文献と対比し,新たに文献を見出して,肥前磁器の編年の組立ての基本的研究の資としたい。平成3年度は,室内整理が主となるが,熱残留磁気による理学的年代測定も行い,その成果と我々の考えとどの程度の違いが出るかについても多大な関心をもっている。本窯址群の調査の本報告書は,平成5年5月に刊行の予定である。
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