研究概要 |
平成3年度は、平成2年度に発掘調査した佐賀県有田町南川原所在の窯「窯ノ辻窯」出土資料の水洗・注記・接合の作業,実測・写真撮影・測量図等の室内作業を実施した。また、有田町に赴いて、文献の収集と整理,中国磁器・瀬戸磁器との比較のための資料収集と研究,物原出土遺物の再検討,墓碑調査を実施した。 「窯ノ辻窯」は17世紀から19世紀の間、4〜5回の操業をしており、窯内外の土層の把握が難しく、多量に出土した遺物の時期決定には、長い時間苦慮したが、未だ決定できない遺物も多くある。出土遺物の時期決定は、2世紀に渡る間断の無い操業を続けた窯は実例が少ないため、近世肥前磁器の編年研究上、重要な意味を持つことになる。有田町内における他の発掘調査の結果・今回の研究における文献資料調査の結果等と合せ考え、慎重な成果を出すことが必要と思われる。 本年度、物原出土資料の研究の結果、これまで「鍋島藩窯が有田岩谷川内から寛文年間に南川原に移ったらしい」という推測を、出土遺物の面から確証へと結びつけることができた。さらに、本年度、資料収集をした藩窯関連資料を分析することによって、本窯「窯ノ辻窯」が鍋島藩窯であったことを実証できると考える。 本研究において、解明したい点のひとつに、窯操業開始時期が挙げられるが、本研究分担者間で表し合われていた時期よりは、少し早い時期であろう、という掘り下げにとどまってしまった。あと少しの研究時間が必要であるが、本研究におして資料を提供することにより、我々もそして若い研究者達へも、今後の課題の材料となり得る題材を残せたと思える。
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