研究分担者 |
中務 哲郎 京都大学, 文学部, 助教授 (50093282)
藤縄 謙三 京都大学, 文学部, 教授 (50025053)
橋本 隆夫 神戸大学, 教養部, 教授 (20027791)
内田 次信 光華女子大学, 助教授
松本 仁助 大阪学院大学, 国際学部, 教授 (30066097)
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研究概要 |
ギリシア・ラテンの文学は神話的・宗教的背景を全く無視して純然たる文学として読んでも、ある程度の理解と感銘は得られるし、他方、ギリシア・ロ-マの神話も単に物語として楽しむことも、宗教史の資料としてのみ見ることも可能である。しかし本研究において、ギリシア・ロ-マ神話の文学化、あるいはギリシア・ラテン文学における宗教的なるものと文芸的なるもののせめぎあいに焦点をあてることによって、文学理解が格段に深まると同時に、神話に秘められた底しれぬ可能性も再確認された。例えば岡は、アキレウスという地方的崇拝の対象にすぎなかった英雄がトロイア戦争の「城市を滅ぼす者」とされることによって、『イリアス』が戦争の意義や生の意味をも問う深い文学となったことを明らかにした。中務は神話的・民話的素材が『オデュッセイア』という叙事詩に組みこまれるに際して、詩人のいかなる独創性が発揮されたかを明らかにした。また,現在進行中の岩波版ギリシア悲劇全集の解説において、岡は『オイディプ-ス王』と『ヒケティデス』で、橋本は『エウメニデス』で、竹部は『トラ-キ-ニアイ』で,中務は『オレステ-ス』で,木曽は『アイア-ス』で,丹下は『メ-デイア』で,伊藤は『縛られたプロメ-テウス』で、宗教性と文芸性の角逐と昇華の問題を考察した。総じて言えることは、素朴な信仰の時代から合理的・批判的精神の発達した後まで、常に神々の存在を忘れることなく、他方で熾烈な芸術的意欲を燃やしつづけたギリシア人は、人間の運命や世界の動きを複眼的に見つめる「二重の動機づけ」という独特の人生観をつかみとり深化させていったということである。 購入した研究書は随時研究分担者に報告して活用の便を計ってきたが、オリエントとロ-マ関係の書物の蒐集がやや遅れぎみなので,次年度の課題としたい。
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