研究課題/領域番号 |
02301070
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡 道男 京都大学, 文学部, 教授 (40025052)
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研究分担者 |
小川 正広 名古屋大学, 文学部, 助教授 (40127064)
中務 哲郎 京都大学, 文学部, 助教授 (50093282)
橋本 隆夫 神戸大学, 教養部, 教授 (20027791)
藤縄 謙三 京都大学, 文学部, 教授 (50025053)
松本 仁助 大阪学院大学, 国際学部, 教授 (30066097)
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キーワード | ギリシア神話 / ロ-マ神話 / ホメロス / アイスキュロス / ソポクレス / エウリピデス |
研究概要 |
本研究は、ギリシヤ・ロ-マ神話には宗教性(信仰や祭祀と結び付いた本来のあり方)と文芸性(文学化され、あるいは哲学に利用されて新たな生命を獲得して行く傾向)の二つの面が顕著に認められることに着目し、いわばその両極性がギリシヤ・ロ-マの精神文化をいかに発展させたかを、前8世紀のホメロスから後5世紀のキリスト教ラテン文学に至るまで、具体的な作品の研究をとおして跡づけようとするものであったが、今年度は時に、会話と文学とがともに栄え、両者の間の緊張も高まった前5世紀、すなわちギリシア悲劇の盛時に研究の力点を置いた。 そこで明らかになったのは、アイスキュロスとソポクレスにあっては、神話を素材とする悲劇を文学として高めようとする努力が、そのまま神話(神々)への信仰告白となり、信仰の深化にも一致したのに対して、エウリピデスになると、同じく神話を素材とする悲劇でありながら、作品からは真の意味での宗教性は急速に失われ、神話は人間の生存にかかわる諸問題をあぶり出す方便と化す、ということである。しかしながら、ギリシア神話における宗教性に対する文芸性の優立は、決してエウリピデスに始まるものではなく、素朴な信仰に生きていたホメロスの叙事詩にあっても、神々の物語の見事な文芸化が認められる。敬神の念篤いと考えられているソポクレスも、悲劇という文学形態の可能性を広げるためには、伝統的な神話を改変することを恐れなかった、ということも新たな知見として得られた。
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