研究課題
平成2年度は、2回にわたり研究会を開催した。今年度は3年間の研究の初年度にあたることから、まず、最終年度に行なう予定としている提言に向け、従来の憲法学における議会制民主主義と選挙・政党制をめぐる理論状況、および日本における選挙制度改革の最近の動向などを概観したうえで、政党への国庫補助の導入をめぐる議論について研究をすすめていくなかで検討すべき諸論点を明らかにし、以後の比較研究を行なっていくうえでの視座を確定した。そのうえで、ドイツ、フランス、イタリア、アメリカ、イギリスの各国における政党への国庫補助の現状とその特徴、それをめぐる理論状況について各担当者で研究をすすめたうえで、2回目の研究会を開催し、その時点までの研究成果を相互交流し、批判的検討を行なった。そこでは、各国で導入されている国庫補助制度の歴史と現状についての知識を各人で共有するとともに、それらの国々において政党が議会において実際に果たしている役割には多くの共通性があるにもかかわらず、それぞれの国の制度相互の間に導入時期、制度の内容および運用についての相違が存在することが確認され、その背景となっている各国の議会制民主主義をめぐる歴史と理論の比較検討、結社一般と政党の憲法上の位置付けの異同の検討、最近選挙運動のなかで大きな位置を占めるようになったマス・メディアと選挙法制との関連、税制と選挙法制との関連の検討がそれぞれ必要であることが共通の認識となった。なお、各国の議会・選挙・政党に関する図書の購入は、新刊を中心にして行なった。