研究課題
研究の第二年度である平成3年度も、前年度に引き続き次のような研究活動を行った。1.個別研究に関しては、各研究分担者が各自に与えられた個別テ-マを継続して研究したが、今年度は特に陪審制度と捜査手続、証拠法との関係、上訴制度、量刑手続の研究に重点を置き、その成果の一部は研究会において発表された。また、今後の研究課題をさらに明確にするために、各研究分担者の分担分野の調整を図った。2.本年度も2回(数名の専門知識提供者を招いて)の合同研究会を開催した。その際、個別報告に加えて、(英・米・仏・独における)陪審制度の歴史的・比較法的検討を目的とした共同研究報告を基に討論を行い、陪審制度採用・導入の理由及び近代刑事司法に与えた影響、具体的な問題点の分析を行った。3.陪審制度の理念、運用論、判例に関する内外の資料蒐集とその分類を継続して行った。重要と思われる多くの外国古典文献のリストアップを行ったものの、その蒐集には更に時間を要することが明らかになった。4.新潟地裁に係属中の事件を素材として、「影の陪審」を使用した実証的研究を前年度に引き続き行った。「近代刑事法における陪審制度の総合的研究」と題する本研究は、その性質上、広範囲にわたる確実な基礎研究を土台とする。今年度の研究活動は、その主目的をこの土台の確固たる構築に設定したが、それは着実に成果をあげ、その一部は「法律時報」誌(第64巻5号)に公表される予定である。しかし本研究は、当初の計画以上に多角的かつ詳細な研究を要することが今年度の研究活動を通じて明らかになった。今後は、陪審制を我が国に導入する具体的な条件整備に向けてより詳細な研究(とくに、我が国の戦前の陪審制度導入過程、実施状況とその問題点、停止理由に関する歴史的研究及び我が国における陪審法試案の総合的研究)を行う必要があろう。
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