研究概要 |
政府の年金政策・雇用政策との関連での定年延長にかかる企業の人事政策の一般的動向と労働市場における高齢者の位置の変化をマクロ的に概観し理論的に整理した概括レポ-トにもとづいて,三つのケ-ススタディを行ない,企業現場で定年延長のもと高齢労働者の処遇がどのように変化しつつあるか,詳細にデ-タを集め,分析した。他にいくつかの企業でヒアリングも行なった。 この結果,明らかになったことは,(1) 旧定年年齢時以降の労働者は一般的に旧来からの終身雇用年功制の枠外において処遇されていること,(2) ただ産業ごとに,たとえばブルカラ-を多く抱える製造業と典型的なホワイトカラ-セッタ-の銀行では,ある違いがみられること,(3) さらに同一企業内でもその処遇がさらに労働者個々人により相違があるという意味で個別的であること,である。 1990年9月にベルリンで開かれた国際会議では,日本側の三っつのケ-ススタディが発表されて,その詳細な実態分析は参加チ-ムの賞讃するところであった。 引き続き,もっとも産業構造変化の激しい波を浴びた鉄鋼メ-カ-,典型的な中小零細部門である港湾荷役業の調査に着手しつつあるところである。また国のさまざまな高齢者雇用促進政策の利用実態と効果についても調査を着手しつつある。最後に,これらの実態調査から得られた発見を,一般化する,という理論的作業も残されている。
|