本年度の研究は、分担に基づく各自の資料調査と研究会での報告を中心に実施した。これまでに行われた研究報告は次の通り。加瀬和俊「農林漁業統制末端機構の経営問題」(H3.4)、金子文夫「戦時期の満州経済ーー『張公権文書』より」(H3.5)、山崎志郎「戦時経済資料について」(H3.5)、加藤新一「昭和20年代における公的信用供与管理と財政出資・投資」(H3.6)、平智之「日中戦争期の横浜正金銀行」(H3.6)、荻野喜弘「戦時労働の前提一石炭鉱業の場合」(H3.11)、山崎志郎「日中戦争勃発前後の航空機産業」(H3.12)。このほかに研究分担者の専攻の偏りを補うため、7月に伊藤武夫氏と柳沢遊氏に報告を依頼した(伊藤「液体燃料国策の形成と展開」、柳沢「商工組合中央金庫の形成と展開」)。いずれも新しい資料の発掘と分析に基づくものである。例えば、荻野報告は、戦時期に炭鉱の機械化が急速に進展した事実を指摘するとともに植民地労働者の待遇に関するデ-タを提示して、戦時期の石炭生産の維持がもっぱら植民地労働力の強制的大量投入によるという通説的イメ-ジに修正をせまった。また12月の山崎報告は、防衛庁防衛研究所が所蔵する『陸軍密大日記』の丹念な追跡によって昭和10年代前半の航空機産業における原価、賃金、下請け利用状況、資材調達状況に関する詳細なデ-タを明らかにしたものである。これらの報告を踏まえて平成4年2月の研究会で共同研究の成果取りまとめについて議論し、目次案を確定した。
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