平成2年〜4年度の3年度にわたって、戦時日本経済に関する資料調査・整理と、それをふまえた共同研究を実施た。資料調査は、大蔵省財政史室、通商産業省、日本銀行、防衛庁防衛研究所、三菱重工業株式会社、臨雲文、東京大学経済学部について実施した。このうち、大蔵省財政史室では、近年公開された『昭和財政史資料』9巻など、三菱重工業では、三菱造船・旧三菱重工の株主総会資料・取締役会資料・場所長会議資料など、防衛究所では『陸軍密大日記』、臨雲文庫では『結城豊太郎関係文章』を調査し、必要な資料を複写・収集した。た、調査した資料はパソコンに入力して、データベースを構築した。 資料調査と並行して、戦後日本の経済発展の歴史的起点を戦時経済に探るという共通の視点にたって、国際比、生産統制、配給統制、貿易統制、労働統制、金融統制、外国為替統制、植民地経営の各分野につて実証研究を進めた。中間的な研究成果は、ほぼ月1回の研究会で報告され、これをもとに討議を繰り返したの結果、戦後日本経済の制度的枠組みが、戦時の高時に組織化され統制された経済運営の中で準備されたこと多くの分野について実証的に明らかになった。特に、基本的な生産要素(資金、労働)の配分システムである調融資制度と新規学卒者職業紹介制度について、戦時期におけるその形成と運用の実態が明らかになったこと意味は大きいと考えられる。研究成果は、共著書として東京大学出版会から刊行する予定である。
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