研究課題
総合研究(A)
本研究は、3年間にわたり、各国(米・英・独・日・韓)の福祉国家財政研究のサーベイと研究分担者を中心とする研究報告を行ってきた。本年度は、これらの研究成果のうえに立って、『福祉国家財政の国際比較』(東京大学出版会)を刊行した。従来の福祉国家財政研究は、医療年金等の個別の福祉サービスの検討に終わっていたが、本研究の特色は、第1に、福祉国家財政を現代資本主義体制を支える特質と把え、第2に、地方財政や企業社会が担う福祉的諸機能を含めて、福祉国家財政の総体を把握しようと試みた点である。本書は、アメリカ・イギリス・ドイツ・日本の先進4ヶ国を比較した4編と韓国を扱った補論からなる。アメリカについては、世界システム上の位置を考慮して「覇権国と低福祉」と位置づけ、福祉国家の相対的低位を明らかにした。イギリスについては、「ラディカリズムの実験」として、サッチャリズムがもたらした功罪に関して、マネタリズム・プライヴィタイゼーション・人頭税導入問題を中心に検討した。またドイツについては、「連帯社会の試練」として、東西ドイツの統一がもたらした財政的影響と補助金問題を検討した。そして日本については、地方公共団体と企業社会が数多くの福祉的諸機能を担っている日本福祉国家の特徴を「柔構造の福祉システム」と捉えた。また補論では、NIES諸国の代表例として、日本をモデルにして急速に福祉国家化している韓国の現状と問題点を明らかにした。
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