研究分担者 |
中村 英二 広島大学, 理学部, 教授 (00000787)
池田 進 高エネルギー物理学研究所, 助教授 (80132679)
野田 幸男 千葉大学, 理学部, 助教授 (80127274)
冨永 靖徳 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (00013540)
八木 駿郎 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30002132)
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研究概要 |
1.水素結合型構造相転移をする代表的物質であるKH_2PO_4の相転移機構をめぐって,それまで世界的に受け入れられてきた水素のトンネリング・モデルと,我々の提出したH_2PO_4双極子の秩序無秩序相転移モデルとの間でしばらく論争があった。この班の研究により (1)中性子非干渉性(非)弾性散乱を用いると,水素の運動についてトンネリングと(後者で帰結される)確率的運動の区別ができることが気付かれ,実験が行われた。その結果前者が否定され,散乱スペクトルは他の手段で得られる緩和時間と定量的にも矛盾なく,我々のモデルでよく説明されることが解った。 (2)前者の証拠とみなされていた高温相でのラマン散乱のスペクトルの再測定が,同じ領域の振動数を測定できるハイパーラマン,遠赤外反射の測定を併せて,KD_2PO_4や同形の結晶も含めて広い温度範囲で,高圧下を含めて行われた。その結果は我々の立場,即ち臨界緩和モードと,秩序無秩序型であることによる局所的な対称性の低下でこれらのスペクトルがよく説明されることが解った。 2.0次元水素結合系と言えるM_3H(D)(XO_4)_2(X=S,Se)系の相転移が発見され,その相転移機構の研究が3次元系であるKH_2PO_4との対比で進んだ。その結果,我々の提唱していた幾何学的同位元素効果-水素結合の長さO-O距離と相転移温度が関係-だけでなく,周囲の原子の幾何学的配置がH→D置換,圧力で変化することが整理されてきた。更にはHとDで,水素結合上の電子分布に有意の差が在ることも確認された。問題は新たに電子,水素と格子の結合系を解くという課題となった。 3.いくつかの水素結合結晶において,H→D置換や高圧印加により新しい相が出現すること,およびその相転移温度が大きく変化することが発見された。
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