研究概要 |
本研究の主題は「カオス的遍歴」(chaotic itinerancy;CI)現象の解明である。この現象を情報理論にもとづく手法によって解明すると同時に,その現象が有する特性を情報処理機能という観点から特徴づける作業を進めつつある。以下に各分担者の研究実績概要を示す。 ●(池田,松本)ー二次元ナビエストークス乱流の情報構造の研究を実行する為の準備がほぼ終った。●(池田)ー光学系モデルで見られる,CIに伴うアトラクター間の低次元経路が自己組織される過程がほぼ解明された。●(津田)確率的ニューラルネットワーク系のCI現象を様々な角度から研究している。津田,池田のモデルで見られる経路の自己組織過程にはさまざまな共通点がみられることがわかってきた。●(金子)大域的結合写像格子の研究を進展させつつある。クラスター集合からなる多数のアトラクターを巡るCIが,自由度数の変動という観点から研究された。このような系では,カオスによって発生する雑音が熱力学的極限で大数の法則に従わないという注目すべき事実を発見した。●(佐野)液晶系に電場変調を加えた時発生するターゲットパターンが生成消滅するライフサイクルを実験的に調べている。また格子欠陥をつなぐ特異な紐構造のダイナミクスの研究に着手した。●(松本)粘菌変形体での情報伝搬過程の研究を進めている。条件つき情報量を用いて,位相情報の発信中心を同定し,位相波の変調という形で粘菌変形体内での情報伝達が行われていることを解明した。 なお本年度は研究会を開催し,広い分野で見られるCI様現象の収集に努めた。大は気象現象から小は液体分子の運動に到る様々な領域でCI現象が広く報告されていることを確認した。
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