研究概要 |
板材の各種逐次成形法においては,変形の基本は局部的な張出し,曲げまたは展伸で,このような基本変形を材料各部に順次付与することにより目的の形状に成形する.本研究ではまず局部的変形を任意の位置に付与できる装置を試作し,次にそれぞれの基本変形の特性を調べ,さらに異形形状容器の成形のため適正な負荷経路の選定基準と成形限界の評価法を確立する.本研究の結果を以下に要約する. 1. サ-ボモ-タ駆動のXYテ-ブルと油圧駆動のZ方向移動用アクチュエ-タを組み合わせた逐次成形装置を試作した.この装置の位置決め精度はXY方向について25μm(負荷荷重50kgf),Z方向について20μm(負荷荷重200kgf)である. 2. 基本変形の一つである局部的張出しについて,工具の押し込み量(Z方向)を固定し工具を材料に対して横移動(XY方向)する方式と,順次隣接する位置に押し込みを与える方式とを取り上げ,成形限界を実験的に調べた.また,上述の張出し成形においてゴムのパッドにより背圧を加え,曲げ変形を付加する方式の効果についても検討した. 3. 段付きの四角錐台等のいくつかの代表形状について負荷経路を変化させ成形限界を調べた結果,板厚ひずみ分布を平均化するような負荷経路を採ることにより成形限界を向上できることがわかった. 4. 負荷増分の大きさを小さくとれば成形限界は近似的には負荷経路によらず板厚ひずみで規定される.そして,限界ひずみは引張りのひずみの2倍以上(A1ー0ではε=0.7)になることがわかった. 5. 材料の変形は工具接触部分に限られるとの実験結果より,逐次成形におけるひずみをこのような変形モデルにより求め,上記4.の限界ひずみとの比較より逐次成形の成形限界を求める方法を提示した.そしてこの方法による推定値は実験結果とほぼ一致することを示した.
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