研究分担者 |
谷村 好洋 国立科学博物館, 地学研究部, 研究官 (80141985)
尾田 太良 熊本大学, 理学部, 助教授 (60108454)
岡田 尚武 山形大学, 理学部, 教授 (80111334)
野崎 義行 東京大学, 海洋研究所, 教授 (70126142)
半田 暢彦 名古屋大学, 水圏科学研究所, 教授 (00022559)
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研究概要 |
本研究は、日本海溝の最深部に係留されたセジメント・トラップ(水深約1000m,3500m,5500m,8500m)に捕集された沈降粒子について、総合研究〔元素分析および放射性核種による物質移動(野崎)、有機物の量および組成変化(半田)、有機物の分子レベルの組成変化(石渡)、有孔虫殻の酸素・炭素同位体比(大場)、各種プランクトンの群集解材(ココリス-岡田,有孔虫-尾田,放散虫-山内,一渦鞭毛藻および花粉-松岡)、粘土鉱物と黄砂の分析(青木)〕を行って、沈降粒子の量および質ならびにその経年変化を多角的に捉えようとするものである。その結果、これまでに次のような主な知見が得られた。 1.日本海溝の沈降粒子の堆積速度は、平均50g/m^2・年であり、これまでに調査された他の海盆よりも大きい。 2.水深の深いトラップにより多くの沈降粒子が捕捉される場合があり砕屑物ばかりではなく有機物についても、海溝壁からの再堆積が考えられる。このことは、有機物に比較的新鮮なものと続成作用の進んだものがあることからも伺える。 3.各トラップ中の沈降粒子は、その量や質に明瞭な季節変化が認められ、海洋表層の生物生産量および沈降中の粒子の変質に著しく左右される。 4.浮遊性有孔虫を一個体づつ殻の酸素・炭素同位体比を測定すると、各種の生息深度に関する評細な情報が得られる。 5.各種プランクトンの捕集された量および種構成には明瞭な季節変化が認められ、海洋表層の春と秋の植物プランクトンのブルームや水塊の移動がトラップ試科に現れている。 6.各トラップの枠に取りつけられた浮遊性有孔虫殻の現場での溶解実験は、予想以上に著しい溶解が起こっていることを明らかにした。
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